所有者の都合で売却しますが、購入者のニーズも踏まえて適齢期を考えることがポイントです。
一般的には築年数、売却時の税金、世の中の経済状況の判断基準が必要になりますが、
マンション固有の特性があり、その特性をメインに、一般的な特性も加えて総合的に判断すべきです。
判断基準になる適齢期について詳細解説させていただきます。
築年数の適齢期
築年数 5年以内が理想適齢期 10年以内が限界適齢期
築年数が経過すればするほど売却価格は下落します。
中古マンション購入希望者がネット検索等で候補を選択する場合、
予算、地域、部屋の広さ、築年数の項目があります。
この築年数の項目は
「3年以内」「5年以内」「10年以内」「15年以内」
を選択するようになっています。
予算の範囲内でまず築浅物件の「3年以内」を選択して、
リストアップされた物件を閲覧します。
さらに妥協して、「5年以内」、「10年以内」に選択幅を広げて
検索するのが購入希望者の検索パターンです。
購入希望者が検索するのが、「10年以内」までです。
「15年以内」を選択しないのが現状です。
10年を超えるとかなり厳しい状況になります。
たった1年の差ですが、上記の状況が「10年以内が限界適齢期」の由来です。
「5年以内が理想適齢期」の理由は、
まだまだ日本の市場は新築マンション神話が根深く残っているため、
購入希望者の大多数はまず新築マンションから候補を選択します。
新築の比較物件として、新築並みを基準に候補をリストアップします。
部屋の内装設備等はほぼ新築並みと判断し、しかも価格が新築に比べて10%~20%
安い等のメリットを感じて購入にいたるのが「5年以内」の築浅物件のパターンです。
上記内容が「5年以内が理想適齢期」の理由です。
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売却時の税金を考慮した適齢期
売却して利益が発生した場合
マンションを売却して利益がでると、利益金額に対して税金が課税されます。
個人が居住用財産以外(投資用マンション、別荘等)を譲渡(売却)した場合
所有期間によって、長期譲渡所得、短期譲渡所得に区別されます。
(1)譲渡所得の区分
譲渡した年の1月1日における所有期間によって
長期譲渡所得(5年超)と短期譲渡所得(5年以下)に区分します。
平成28年に不動産を譲渡した場合、譲渡した不動産を取得した日が
平成22年12月31日以前に取得した場合 :長期譲渡所得
平成23年1月1日以後に取得した場合 :短期譲渡所得
【注意点】
取得した日から1月1日を6回むかえて譲渡しないと長期譲渡所得になりません。
上記の例のように1日違っただけで、長期譲渡所得と短期譲渡所得の違いになります。
長期と短期とでは税率が大きく変わります。
(2)譲渡所得の税率
長期譲渡所得の税率
所得税15%(15.315%) 住民税5% 合計20%(20.315%)
短期譲渡所得の税率
所得税30%(30.63) 住民税9% 合計39%(39.63%)
復興財源確保法の規定により、平成25年から25年間は基準所得税額に2.1%の特別税が上乗せされます。
長期譲渡所得の所得税は15.315% 短期譲渡所得の所得税は30.63%になります。
(3)課税譲渡所得の計算
課税譲渡所得の計算式
譲渡収入金額-必要経費(取得費+譲渡費用)=譲渡所得金額
譲渡所得金額-特別控除額=課税譲渡所得金額
上記の「課税譲渡所得金額」に対して「長期」「短期」の税率が適用され「譲渡所得税」
が決まります。
上記の内容が売却時に発生する税金の内容です。「長期」「短期」とたった1日の違いで
2倍近くの税率になります。投資用マンション等個人が居住用財産以外を譲渡した場合は
「5年超」所有期間が売却の適齢期になります。
一方、居住用財産を譲渡した場合は「3000万円特別控除」の制度があり、所有期間に
関係なく適用できるため、3000万円以内の課税譲渡所得金額であれば税金が課税されません。
居住用財産とは、生活の拠点にしている事が条件で、一時的に利用している別荘等は
居住用財産には当てはまりません。
上記の例であれば、税金面を基準に置くと適齢期は存在しないことになります。
次に他の居住用財産を譲渡した場合の特別控除については
「特定の居住用財産の買換えの特例」「居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例」
の2点がありいずれも「10年超」所有期間が適用要件であり、上記を適用する場合
「10年超」所有期間が適齢期になります。
「特定の居住用財産の買換えの特例」とは通常であれば、
売却利益に対して税金が課税されますが、適用要件を満たした上に、
売却価格以上の自宅を次に購入すれば税金が課税されない制度です。
「居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例」とは「居住用財産の3000万円特別控除」
を適用しても、なおかつ長期譲渡所得金額がある場合、
課税税率20、315%(長期譲渡所得の税率)を
14、21%(6000万円以下の部分)に軽減する制度です。
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売却して損失が発生した場合
1、 居住用財産の買換えの場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除制度
個人が居住用財産を譲渡して、一定の期間内に居住用財産(買換資産)の取得をして居住の用に供したときは、
一定の要件が整えば、その居住用財産の譲渡損失の金額について
損益通算および翌年以後3年内の各年分の総所得金額等からの繰越控除を認める制度です。
2、 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除制度
住宅を譲渡しても住宅ローンを返済しきれない人への支援措置として、
居住用財産の譲渡損失の内、住宅ローン残高が譲渡対価を超える場合の
その差額(住宅ローン残高-譲渡対価)を限度として、
他の所得との損益通算及び損失の翌年以後3年内の繰り越しを認める制度です。
1、 2とも所有期間 「5年超」期間が適用条件になります。
「5年超」期間が売却の適齢期になります。税金面を考慮すると、 「5年超」「10年超」所有期間が適齢期になります。
「居住用財産を譲渡した場合の3000万円特別控除」を適用できる物件であれば
適齢期はなしになります。
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経済状況を考慮した家(マンション)売却の適齢期
マンションの価格は経済状況に大きく左右されます。
古くはバブル期に短期間の間に2倍、3倍になった例もあります。
直近ではアベノミクス政策の効果により、また建築費の高騰もあり、
現状東京都内のマンション価格はバブル期並みの価格になっています。
マンション価格は需要と供給のバランスによって決定されます。
経済状況が上昇基調になると、需要増になり価格は上昇基調になります。
一方下降基調になると、需要減になり価格は下降基調になります。
経済状況をどう捕らえるかが売却時期の適齢期になります。
家(マンション)固有の適齢期
希少価値物件
1、都内の山手線内の主要ターミナル付近に立地する物件
付近にマンションが立つ余地がない状況があり築年数に左右されない要素もあり、環境変化、経済状況の変化により価格が大きく上昇する可能性があります。築年数が10年以上でも価格がなかなか下落しません。
築年数が古くなっても、需要がいつまでたっても落ちないので価格が維持できるからです。
2、都内の文教地区
子供の教育にかける親の熱意が続くかぎり、上記の1、同様の状況です。
上記の1、2については資産物件と考え、賃貸物件として家賃収入を得る物件として売却せず、
いつまででも持ち続けて家賃を稼ぐ物件としての位置付けに考えた方が賢明です。
地域の環境変化(プラス要因 マイナス要因)
プラス要因
マンションが立地している地域の環境変化も価格を大きく左右します。
立地している付近に駅が新設される計画発表があった、
大型ショッピングセンターの建設予定があるとか等
プラスになる環境要因がある時は価格上昇の可能性があるので完成時期までが売却適齢期になります。
マイナス要因
低価格の大型マンションの建築計画、周辺にマンションが乱立してきた時、
周辺に嫌悪施設の建築計画等の情報をキャッチすれば、すぐに売却しましょう。
情報をキャッチした時点が売却の適齢期になります。
大規模修繕計画
通常マンションの場合、10年~12年のサイクルで大規模修繕が実施されます。
屋根の防水、外壁の補修、給排水管の補修等の大規模修繕です。
管理組合が毎月、各戸から「修繕積立金」を徴収して大規模修繕の費用を積立てます。
上記の積立金が大規模修繕計画の予算とかけ離れていると、
大規模修繕が実施されるときに多額の一時金を徴収される可能性があります。
上記の情報をキャッチした時点が売却の適齢期になります。
以上がマンション固有の適齢期になります。
上記で説明しましたマンション固有の適齢期をメインに、
一般的な適齢期(築年数、税金、経済状況)を加味して
常に最新情報を収集し早めの行動を心がけましょう。
意外とマンション売却には時間と労力がかかります。
最適な「売却の適齢期」は御自身の情報収集力と判断力が最大の決め手です。